昭和歌謡大全集 村上龍
"原付に乗ってきた 女は、モップに取り付けた包丁をスギオカののどに突き刺した。"
場面を表しているだけなのに小気味よいあらすじが書かれいているのがこの本である。
解説によると、村上龍が失望の最中に書いていた小説で、楽しさをモットーに書いたものです。
ずいぶん前に、ある知り合いから映画を見せてもらったことがある。
「この映画を作った人は頭がいいし、内容を理解するにも頭がよくないと分からない。」
タイトルも忘れてしまったが、印象的だったシーンは暴力おばあさんがスクーターに乗って若者を虐待するという皮肉めいた場面であった。
その内容がモチーフになっているかどうかは分からないが、物語はその映画の雰囲気とよく似ていると感じた。
村上龍の小説を読んで感じることは常に「暴力」が付きまとうことが多い。
「長崎オランダ村」のような例外もあるが、「コインロッカーベイビーズ」、「半島を出よ」、「限りなく透明に近いブルー」、「海の向こうで戦争が始まる」などが例として挙げられる。
暴力とは、自己の抑圧に対する解放であり、反応である。
抑圧は誰しもが抱えていることであり、その衝動に対して拳を振りかざそうという人間はあまり多くない。
コロ助のような誰も責めることが出来ないこの抑圧に対して、読むにはいい本であると思いました。