あすなろ物語 井上靖
"明日は何ものかになろうというあすなろたちが、日本の都市から全く姿を消してしまったのは、B29の爆撃が漸く熾烈を極め出した終戦の年の冬頃 からである。
日本人の誰もがもう明日と言う日を信じなくなっていた。"
翌檜とはヒノキ科に属する木で、ヒノキと姿は似ているものの、ヒノキほど大きくはない木である。
永遠に檜になれないあすなろは、
その特徴ゆえに、何か目標を目掛けて活動する青年等を指す言葉として使われているそうです。
幼少期の主人公は青年となり、社会人となり、様々な劣等感を抱きながら時を過ごしていく。
ぼんやりと知っている井上先生の記憶から、自伝的小説かなと捉えつつ読んでいたら、解説にもそうであると書かれていた。
僕たちは、あすなろのような存在が近くに居ると多感に影響をうけます。
ややこしい生き方をしている井上先生も多感だったと想像がつくので、きっといろいろ考えていたのでしょうね。
純文学に振れたのはとても久しぶりです。
コロ助の影響で多感な時代に突入しているので、苦労人の書いた文章が暖かく感じます。
コロ助が明けると信じて、僕たちもあすなろとなり、先のことを考える必要がありますね。